人手不足が慢性化し、働き方が激変する年になる

Date - 2017.01.06

さて今回は、『日経ビジネスONLINE』より、経済ジャーナリストの

磯山友幸氏の、2017年の「働き方」動向予測につてお伝えします。

 

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▼「人手不足」はバブル期以来の高水準

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年末の27日に総務省が発表した2016年11月分の労働力調査によると、

雇用者数が5758万人と前の年の同じ月に比べて82万人、率にして1.4%

増え、47カ月連続の増加となりました。47カ月というのはアベノミクス

が始まった2013年1月以来ずっと、ということです。完全失業率は3.1%

と、先進国の中でも例をみない率まで低下しており、事実上完全雇用と言

ってよい状態になっています。

 

人手不足は深刻で、求職者1人に対して何件の求人があるかを示す「有効求人倍率」は11月に1.41倍を記録。バブル期の1991年7月以来、25年4カ月ぶりの高水準となりました。

 

2017年もこの人手不足が一段と深刻化するのは間違いありません。女性

や高齢者の活用を声高に叫んでみたところで、早晩、限界がやってきます。

 

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▼「働き方」を変えなければ、会社も社員ももたない

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そんな世界的に例をみないほどの人手不足が、日本人の働き方を根本か

ら変える──。今年はその大きな転換点の年になるでしょう。

 

人手不足によって多くの会社で「今まで通りの働き方」では社員がもたな

いギリギリのところまで来ています。「失われた20年」の間に社員数を

絞りに絞ったところへ、景気が底入れし、仕事が増えたのだから社員はた

まりません。

 

オリンピックに向けて、今後景気が過熱すれば、人手不足による忙しさは

今の比ではなくなります。安倍首相は「働き方改革こそが今後3年間の

最大のチャレンジ」だと繰り返し述べていますが、安倍首相に言われるま

でもなく、「働き方」を変えなければ、会社も社員ももたないのです。

 

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▼自ら動いたら「大吉」

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そんな今をおみくじで占うなら「自ら動いたら大吉」でしょう。

企業は慢性的な人手不足に加え、将来にわたって人材を確保できる展望

が描けないことから、新卒一括採用だけでは足らず、中途採用の拡大を一

層進めていくことになります。優秀な社員ほど、自ら積極的に動けば有利

な転職ができる、そんな年になりそうです。

 

一方、優秀な人材を集めようと思えば、待遇を改善しなければ難しいでし

ょう。今いる優秀な社員をつなぎとめるにも、処遇改善は不可欠です。も

ちろん限られた人材の獲得合戦なので、同じ業界なら早く経営者が動い

た企業が「勝ち」です。

 

ただ給料を引き上げるだけでは人件費が増えるだけ。考える経営者なら

ば、無駄な仕事を省き、収益性の高い事業へ人材を集中させること、つま

り、根本的に働き方を変える方向へと動き始めます。

 

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▼今年は「人手不足倒産」が増える

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「自ら動かなかった」場合には結果は真逆になります。

 

働き方を変えずに放置した結果、優秀な人材が勤務時間の長さに辟易し

て他社へ転職したとします。そうなれば、当然、残った人の負担は増え、

ますます残業時間が長くなり、ある一点を超えた段階で続々と人が辞め、

その会社の事業が滞ります。体力のない企業では、今年は「人手不足倒産」

が増えることになるでしょう。

 

働く社員の立場からみても同じ事が言えます。さっさと見限らなかった

ために、仕事がさらに厳しくなり、ストレスも溜まる。多少残業代が増え

たとしても、満足度は上がらないでしょう。

 

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▼「ROE経営」が再び注目される

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働き方を根本から変える場合、企業経営のあり方も根本から変わります。

利益率の高い事業に特化し、不採算事業や競合他社の多い事業は売却や

廃止。これは欧米では当たり前に行われている経営スタイルです。株主資

本に対する利益率をみる「ROE経営」などが再び注目されることになり

ます。

 

実は安倍内閣はアベノミクスの柱のひとつとしてコーポレートガバナン

スの強化を進めてきました。その目的は「日本企業に稼ぐ力を取り戻させ

る」ことで、ROEを欧米企業並みに引き上げるとしていました。働き方

改革を実現するには、もっと企業に儲ける経営をしてもらわなければな

りません。その点で、安倍内閣が掲げる「ガバナンス改革」と「働き方改

革」の方向性は整合的です。

 

政府が旗を振る「同一労働同一賃金」や「最低賃金の引き上げ」などは働

き方改革の入り口の政策に過ぎません。最終的には効率的に働く社員に

欧米企業並みの高給が払えるような、きっちり儲ける働き方を実践でき

るような制度整備や企業経営のあり方が問われることになるでしょう。

 

 

出典:日経ビジネスONLINE