小売業の「正月三が日休業」に9割近い支持

Date - 2017.01.13

今回は、『日経ビジネスONLINE』より、正月三が日休業を検討している

三越伊勢丹ホールディングスの事例から、働き方についての世論の変化

をお伝えいたします。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

▼三越伊勢丹HDが2018年から正月三が日の休業を検討

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

三越伊勢丹ホールディングスが2018年から正月三が日は休業すること

を検討し始めたというニュースがありました。従業員の正月休みを増や

し、働く環境に配慮しようというのが狙いだ、といいます。

 

顧客の利便性よりも働く従業員の生活を重視する──。果たして消費者

はこれに理解を示すのでしょうか。

 

1月4日朝の東京MXテレビ『モーニングCROSS』で行った、番組時間

中に視聴者アンケート。質問は「小売業界が三が日休むこと」に対して賛

成か反対かを聞いたものでした。結果は、圧倒的に賛成意見が多かく、実

に86.5%が三越伊勢丹の検討を支持しました。

 

何から何まで便利になり、いつでも物が買えるのが当たり前というのは、

せいぜいここ20~30年の話。昔は市場が閉まり、物が店頭から消えたか

ら、保存がきくお節料理やお餅を食べつないだのです。

 

今は便利さを実現するために、大晦日まで歳末大売り出しの店頭に立ち、

テレビから流れる除夜の鐘を聴きながら、模様替えを行って元旦からの

初売りに備える。そんな仕事の仕方を迫られる人たちが俄然増えたので

す。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

▼「消費者」よりも「働き手」として判断した人が多かった

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

また、86.5%という数字は、「消費者」よりも「働き手」として、このニ

ュースを見る人が多かったことが予想されます。根本的に家族の構造が

変わったことが、人々の意見を変化させたのではないでしょうか。

 

 

総務省の「労働力調査」によると、2015年の共働き世帯は1114万世帯

であるのに対して、専業主婦世帯は687万世帯。この差は年々開いてい

ますが、とくにこの5年の変化は急激です。共働き世帯が1000万世帯前

後から一気に100万世帯以上増え、専業主婦世帯は800万世帯弱から100

万世帯以上減ったのです。

 

1990年頃までは、専業主婦世帯の数が共働き世帯を上回っていました。

1990年から2000年頃までは両者の拮抗が続き、2000年を境にどんどん

共働き世帯が増えました。

 

つまり、年末年始はお母さんが家にいるのが当たり前、という生活スタイ

ルが激変し、お母さんもお父さんも年末年始は忙しく働いているという

家庭が増えたのです。

 

「もうそろそろ年末年始ぐらいゆっくり休みたい」──多くの人たちが

そう感じるようになったのではないでしょうか。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

▼三越伊勢丹HDの「覚悟」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

三越伊勢丹の経営者はその時代の変化を現場のムードから感じ取ったの

でしょう。休みを決めて発表するのではなく、検討段階だと断ってメディ

アに発信したのは、間違いなく世間の反応をみたいという経営者の思惑

があってのこと。

 

百貨店の経営者にとって営業日を減らす決断は「怖い」。普通ならば営業

日が1日減れば、その分売り上げは減少します。しかも1月3日となれ

ば仕事が休みの人たちがまだまだ多い中、それでも従業員の事を考えて

休みにしますというのは、かなりの「覚悟」が必要です。

 

経営者がそんな「覚悟」を持たなければならなくなったのには理由があり

ます。人手の確保が難しくなっているのです。昨年11月の東京都の有効

求人倍率は2.03倍。職を探している人ひとりに対して2つ以上の求人が

あることを示しています。しかも求人数は79カ月連続増。少子化の影響

もあり圧倒的に人手不足なのです。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

▼外食産業では人手不足で営業を休まざるを得ないところも

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

中には人手が足らないために、営業に支障をきたす業界も出始めていま

す。深夜に営業する外食産業などの中には、人手が確保できずに営業を休

まざるを得ないところも出始めています。

 

アルバイトやパートの時給を引き上げるなど待遇改善で人を集めようと

努力している企業も多いですが、そもそも深夜の仕事や土日の仕事が選

ばれにくくなっています。

 

かつて大手の小売業が地方の高校などでリクルートを行い、大都市圏の

社員寮に住まわせて店舗で働かせる人材確保の仕組みを作っていました。

大都市には仕事がありるが、地方都市は不景気で仕事がない、というのが

前提に成り立っていたわけですが、これが崩れ始めているのです。全国の

都道府県で有効求人倍率が1倍を超えるなど、人手不足は地方都市にも

及んでいるからです。

 

大都市圏に出て来れば、社員寮は格安にしても、生活費は地方の比ではあ

りません。わざわざ大都市に出なくても、自宅から通える地方都市に仕事

があればそこに就職する。そんな若者が増えているのです。今後ますます

大都会の小売業は人材採用に苦労することになるでしょう。

 

そんな中で、長時間労働は当たり前、土日に働くのも当たり前だった小売

業は、真っ先に「働き方」の改革を求められることになります。働き方、

つまり勤務環境を変えなければ人材確保ができなくなるのは目に見えて

いるからです。

 

 

出典:日経ビジネスONLINE