社員の貢献を見える化、働き方に見合う評価を

Date - 2018.02.28

今回は28日の「日経ビジネスONLINEからのご紹介です。

 

伝統的な人事評価制度は、

仕事と生活のバランスの取り方や価値観の多様化に向き合えずにいます。

技術の進歩によって、

仕事やそこで求められるスキルの定義さえ変わってきます。

評価の在り方を再考すべきです。

 

『人事評価の「曖昧」と「納得」』の著者である

名古屋大学大学院経済学研究科、江夏幾多郎准教授

の記事をご紹介します。

 

企業経営における人事評価の目的は、

公正な評価によって従業員の仕事への意欲や

組織への帰属意識を高めたり、

従業員の成長を促したりすることにあります。

評価者(上司)が被評価者(部下)を公正に評価して、

その結果を正確にフィードバックできれば、

仕事に対する意欲を引き出せるでしょう。

だが、上司と部下の双方が納得できる評価を実施するのは

非常に困難なのが実態です。

 

原因は、包括的ではあるが曖昧な評価基準にあります。

戦後の日本企業の人事評価は、

職場環境や従業員個人の職務内容が柔軟に変化するのに対応するため、

評価基準を細かく定義せず現場の運用に委ねてきました。

しかし、人の能力や貢献を定量的に評価するのは容易ではありません。

その結果、能力や貢献を「勤続年数」や「残業時間」で

読み替えるといったやり方が蔓延してきました。

 

さらに、多くの企業では、直属の上司が1次評価を行った後、

さらに上位の組織単位で、

人件費を横目に見ながら評価結果の相対化も行われてきました。

人事評価の客観性を担保するために導入したプロセスが、

正確な評価やオープンなフィードバックを

かえって難しくした側面は否めません。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

従来型の評価制度の限界

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

人事評価制度の問題点は長らく認識されつつも、

今日まで解消されてきませんでした。

日本的な人事評価制度は、

「いつでも、どこでも、何でもする」

という制約なき働き方と整合的です。

こうした制度の適用対象である総合職正社員は、

定年までの雇用保障と引き換えに制度の不備を許容してきました。

 

しかし、子育てや介護、闘病などと仕事の両立を目指す人、

企業主導のキャリア開発を望まない人が最近増えています。

企業側も多様な属性や価値観を持つ人が等しく活躍できる環境を整える、

すなわちダイバーシティーを推進しようとしています。

「働き方改革」と称し、政府もその流れを後押ししています。

 

背景には産業構造の変化や経済のグローバル化、

情報技術の発展に伴う仕事上求められるスキルの変化もあります。

 

現場に目を向けると、勤務時間や働く場所の面で

制約があるにもかかわらず、

制約のない働き方をする社員と同等以上の貢献をする人々は

少なくありません。

半面、旧来の働き方をする人々の労働生産性が

必ずしも高いとは言い難いところです。

 

にもかかわらず、

勤続年数や残業時間に影響されがちな従来型の評価制度のままでは

働き方に制約がありながらも社業に貢献している社員を

公正に評価するのは難しいものです。

評価制度のアップデートは、

経営者および人事担当者の責任として急務です。

 

企業があらかじめ定める「人事考課」にせよ、

上司と部下が毎期ごとに話し合って

目標を定める「目標管理(MBO=Management by objectives)」にせよ、

改善する余地はまだまだあります。

外部の専門家に仕組みづくりを依頼してもいいし、

書籍などを参考に人事担当者が内製することも可能です。

 

ただし、実際に評価するのは管理者です。

人間である以上、評価を下すプロセスの中から、

バイアスを完全に排除することはできません。

 

古いデータではありますが、

日本労働研究機構(現・労働政策研究・研修機構)が1998年に

企業の管理職を対象に行った調査によれば、

「評価者が代わることで従業員の評価(5段階)がどのくらい変わるか」

という質問に対し、9割が1段階または2段階変わると答えました

「評価は変わらない」と答えた人はわずか4.2%でした。

ある人にとって公正中立でも、

別の人にとっては「えこひいき」になることはままあることです。

 

こうした局面を打開するのは、

評価者と被評価者のコミュニケーションがやはり重要となります。

カギとなるのは「これまで」から「これから」へ視点を移動すること。

さらに上司が部下に接する時間を物理的に増やすことです。

 

上司が部下を評価する際、前期の営業成績など

過去の取り組みに目が向きがちです。

過去を顧みながらも、

部下が未来に対して前向きに働けるよう助言することこそが

フィードバックの本質です。

それが意欲の向上や次期の成績につながるからです。

 

評価について、

評価者が自らの言葉で

愚直に伝えられるかどうかもポイントとなります。

伝える内容だけでなく、そこにかける時間や熱量も重要です。

多くの日本企業では、

上司と部下とのコミュニケーションは淡白になりがちです。

その理由として「自らの業務の繁忙」を挙げる評価者が多いが、

部門の目標達成のために部下を指導・支援するのが

管理者の本来の役割のはずです。

 

「働き方改革」とダイバーシティ推進、

その中で必要な管理者の客観的な評価と、社員の貢献の密接な関係。

できる限りのバイアスを排除し、

社員とのコミュニケーションを図っていくことの急務性と重要性について

どう感じられたでしょうか。

これからの時代に必要な考え方と言えそうです。

 

 

 

出典:日経ビジネスONLINE