「業務の細分・集約」に着手せよ
Date - 2015.01.30
今回は『日経トップリーダー』より、急速に人手不足が進む中、中小企
業でもできる対策として考案されている新しい勤務体系をご紹介いた
します。
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▼時間と業務の切り分けによる新しい勤務体制
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現在進行中の人手不足は、大胆な移民政策などが実施されない限り、将
来にわたって解消されることはまず期待できません。
そんな中で、中小企業が人を集めるには、これまでのやり方を変えるし
かありません。
すぐ取り組めるのは、採用の激戦区ではなく層を狙うこと。
採用しやすい層として、定年退職者などのシニアがいます。主婦層も男
性よりは採用のハードルは低いといえます。
「既に女性やシニア層に向けて求人広告を打っているが集まらない」
という声も聞こえてきますが、そう言う経営者ほど、女性やシニア層を
真剣に会社に迎え入れる工夫をしていない場合が多いのです。
勤務体制の柔軟化をみてもそれが伺えます。
多くの企業で短縮時間勤務を採用し始めていますが、「フルタイムで週
3日」「ウィークデーの半日勤務」程度ではもう人は集まりづらくなって
います。もっと応募者にとって利便性の高い勤務体制を示す企業が続々
と現れているからです。
例えばある量販店では、毎朝2時間だけというシフトでシニア層を集
め、開店前の準備を任せています。朝は高齢の顧客が多いことから、
シニア社員とのコミュニケーションが生まれ、店が朝から活気づくとい
うメリットも生じました。
時間を分断して切り分けることができる仕事が無い、という場合は、例
えば毎日やっている業務を1週間分まとめたり、各店舗に共通する業務
を集約して1人に任せる、という方法もあります。
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▼管理を煩雑にしないコツ
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勤務時間や業務を細分化すると、人手不足は解消しても労務管理が煩雑
になる可能性が出てきますが、それも発想次第で克服可能です。
例えば、業務を細分化した結果1人の社員の仕事を5人のシニアで分担
することになった場合、5人のシフト編成や給与管理といった新たな仕
事発生します。そこで5人を1つのチームとし、シフト組みはチーム内
で融通し合ってもらえば、会社が各人に連絡する手間が省けます。
また、開店準備にシニアを、閉店後の清掃に子育て中の女性を雇うよう
な場合は、従業員が際限なく増えかねません。この場合、2つの作業を
くっつける、つまり閉店後の片付けはせず、翌朝の清掃作業と開店準備
をまとめてシニア社員に任せるような考え方が効果的です。
「まずは正社員にしかできない仕事は何かを考え、次に社員以外に任せ
られる仕事を抜き出す。その上でそれをまとめられないか考えるといい」
と、リクルートジョブズの宇佐川邦子ジョブリサーチセンター長はこう
話します。
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▼応募者をとりこぼさない、辞めさせない
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人手不足を乗り越えるために打つべき2つ目の手は、せっかくの応募者
を取りこぼさないことです。問い合わせの電話がきたら、その場で面接の
アポイントを固めてしまうのがいいでしょう。
そして、採用後のフォローも大切です。
「いくら採用しても、すぐに辞められては意味がない。ここが手薄な企業
が多い」と、「an」などを手掛けるインテリジェンスMSA統括部の神山
隼一統括部長は指摘します。
採用コストや労力がかさむだけでなく、指導を担当する社員のモチベー
ションも下がりかねません。
辞めさせないための決め手はコミュニケーション。
月に1回面談し、話を聞くだけで格段に定着率が上がった実例もありま
す。
これらの方法はいずれもコストはそれほど高くありません。人手不足は
依然続きますが、対策はまだまだあるのです
出典:『日経トップリーダー』2014年12月号
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今後ますます人手不足が深刻になる中で、これまで以上の工夫が必要と
なります。まずは自社の業務を切り分け、時間を切り分けることから始め
てみてはいかがでしょうか。
脱・育児リタイア
Date - 2015.01.16
今回は、最長6年の育児休暇、9分類から選べるワークスタイルなど、
サイボウズの選択型人事システムを通して、優秀な人材を育児によって
失わないためのヒントをご紹介いたします。
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▼育児休暇は最長6年
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労働力不足が深刻化し、女性の活用が声高に叫ばれる昨今。
サイボウズでは、早くから育児休暇を6年まで認めるなど、先進的な取
り組みが注目されてきました。
青野慶久氏が代表取締役社長に就任した2005年は、離職率が28%もあ
りました。結婚、出産を迎える社員が何人かいた事もあり、働きやすい
制度について意見を聞くと、「子どもが小学校に入るまで育休が欲しい」
という意見があったため、この制度に踏み切ったのだそうです。
とはいえ、これまで一番長かった人で4年。仕事への復帰を本気で考え
ている人は1~2年で復帰するのですが、6年の育休があることで様々
な選択肢が生まれ、それが働く安心感につながっているのです。
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▼グループウェアの活用で多様なワークスタイルを実現
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サイボウズでは、育児休暇の他にも、在宅勤務や時短勤務といった働き
方もできるようになっています。時間と場所を組み合わせた9分類のワ
ークスタイルから、自分のライフスタイルに合わせて働き方を選べる人
事制度を採用しているのです。
時間や場所がバラバラでも仕事が回るのは、サイボウズのグループウェ
アがあってこそ。進行中のタスクやスケジュールなど、あらゆる情報を
グループウェア上で共有し、在宅勤務でも問題なくチームの一員として
仕事をこなせる環境が整っています。まさにITの進化が可能にした働
き方、といえるでしょう。
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▼価値観の共有により、ポジティブな空気が生まれる
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また、会社としての価値観が浸透することで、それに共感する人が集ま
り、結果的にポジティブ・フィードバックで、もっといろんなことをや
ってみよう、という風土も根付いたのだそう。
働く人の価値観がお金だけではなく、自己成長や自己実現できるかどう
かが働くモチベーションになっている現在、企業もその価値観をシフト
していかなければ優秀な人材を集めることはますます難しくなってい
くでしょう。
ワークライフバランスという言葉もありますが、働くことと生きること
のバランスをもっとしっかり考えるべきなのでしょう。会社に長くいる
ことが働くことだと思っている日本のホワイトカラーの生産性は、先進
国で最も低いのが現状です。
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▼働き方の多様化が新たな問題への対応力を生む
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働き方の選択肢を増やしたことで、2005年に28%あったサイボウズの
離職率は現在、4%を切るところまで下がりました。働き方の多様性を
許容した結果、イノベーションが生まれやすい環境つくれているのでは
ないか、と青野氏。
働き方の多様化は、新たな問題への対応力も生みます。東日本大震災の
際、サイボウズでは全員が在宅勤務に切り替え、平常どおりの業務をこ
なすことができたのは、その典型と言ってもいいでしょう。
100人の社員がいれば100通りの働き方と人事制度があっていい、と青
野氏は語ります。一人ひとり違っているはずの希望を実現できれば、皆
がハッピーになれる、との思いがあったからこそ、この人事制度が生ま
れ、根付くこととなったのでしょう。
出典:『日経ビジネス』2014年11月17日号
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社長自らも、半年間毎週水曜は育休を取るなど、率先して制度を浸透さ
せようとしたのだそうです。大切な人材を失わないためにも、経営者は
自らが意識を変え、名ばかりではない制度をきちんと整備していく必要
があるのでしょう。
1人ひとりをプロフェッショナルに育てる
Date - 2014.12.12
今回は『日経ビジネス』より、上場来5年連続で増収・増益・増配を続
けるヒューリックの人材成長戦略についてお伝えいたします。
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▼少数精鋭戦略の狙いとは
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都心部を中心に不動産事業を展開するヒューリック。付加価値の源泉は、
少数精鋭主義にあります。社員125人で経常利益259億円、社員1人
当たりの経常利益が2億円に達しています。(2013年12月期)
少数精鋭で成長を続ける戦略と狙いは何なのでしょうか。
西浦三郎社長は、日本の人口動態を考えれば答えはシンプルだ、と言い
ます。労働人口は減り続け、都心部と地方で経済成長が二極化。地方の
女性はチャンスを求めて都心部へ集まります。少数精鋭で生産性を高め、
女性にフルで働いてもらう仕組みが重要になるのは明らかです。
過去の経験がそのままでは通用しない不動産開発などは、創造力豊かで
専門性の高い人でないと務まらないため、優秀な人材を採用し、生産性
がさらに高まるように育成していくしかありません。企業成長と生産性
を測る指標が、社員1人当たりの経常利益だ、という考えです。
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▼30歳以下の若手社員の資格取得を推奨
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新卒を中心とした若手社員は、専門性の高い中途採用社員の後を担うよ
う期待をされています。そのため資格取得は重要で、業務に関連する36
の資格については、資格取得後にその費用の全額を会社が負担します。
若手社員には「現在の収益は中堅・ベテランの社員が稼ぐから、あなた
たちが30歳を過ぎて稼げるように、今は勉強して欲しい」と西浦社長
は常々言っているそうです。
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▼全社を挙げて女性の働きやすい環境を整備
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女性社員を一般職・総合職で分けることはしていません。業務能力に性
別は関係ない、とヒューリックでは考えているからです。
2015年入社予定の新卒社員も、優秀な人材を採った結果、女性5人、
男性2人となりました。2020年には女性管理職の比率を20%にすると
いう宣言もしています。
今年10月には本社ビルに事業所内保育所を設置し、社員はもちろん近
隣の方々も利用できるようになっています。社員の有給取得率が70%
を超すなど、会社を挙げて働きやすい環境整備に取り組んでいるのです。
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▼人材育成、女性活用は企業の持続的成長のための中心戦略
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企業経営は、倒産を避けるためのリスク対応が何より大切です。
自己資本を厚くし、その後に残ったお金をお客様や社会、株主、そして
社員へ最大限還元することが、持続的成長へ欠かせない経営のあり方だ、
と西浦社長は言います。
「人材育成も同様です。創造性を持って働くためには会社にも社員にも
余裕が必要です。人材育成の基本的な方向性や考え方は経営トップが決
め、全社に明言しないと進みません。私たち経営者は次の世代に負の遺
産を残しては絶対にいけない。10年後に役立つ価値を残す準備をいま
着々と行う。若い人に新しい仕事にチャレンジすることを求めているの
ですから、これは経営者の当然の責務だと思っています。」
西浦社長のこの覚悟が、1人当たり経常利益が2億円超の体質を創り上
げたのは間違いありません。
出典:『日経ビジネス』2014年11月3日号
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プロフェッショナル集団を目指しているからこそ、これほどの高利益体
質になるのでしょう。労働人口がますます減少していく中で、少数精鋭
戦略から学ぶことは多いですね。
200倍の巨漢に勝つ
Date - 2014.12.05
今回は『日経ビジネス』より、大手を制する中小企業の事例として、エ
ステー会長の鈴木喬氏の体験談を中心にお伝えいたします。
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▼規模が小さいことは強みである
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エステーの2014年3月期の連結売上高は470億円で、社員はグループ
全体で760人います。ライバルの小林製薬やアース製薬などと比べて売
上規模は3分の1程度。しかし、規模が小さいことは強みだ、と考えて
います。
特に先行き不透明な現代は、身軽で小回りが利く会社こそ強さを発揮で
きます。大きな相手に縮こまるのではなく、今こそ自分たちの強さを発
揮する時だ、と鈴木会長。実際の体験談を以下にご紹介します。
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▼巨大な敵、即効で機先を制す
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2005年、売上規模が約200倍の敵を迎え撃つことになりました。世界
最大の消費財メーカー、米プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)で
す。当時P&Gが据置型の消臭剤を日本で発売する、という情報が事前
に伝わってきました。エステーの主戦場であるエアケア市場に、はるか
に大きな企業が参入することになります。
鈴木会長はすぐに対抗商品を用意するように指示。そうして発売したの
が「置くタイプのエアウォッシュ」という製品です。P&Gが「置き型
ファブリーズ」で参入する2週間前に市場に投入し、機先を制すること
ができました。
速攻が可能だった要因は2つあります。1つは開発済みの技術をすぐに
製品化せず、温存していたこと。多数の技術を開発しては引き出しにし
まい、市場の変化に応じていつでも取り出せるようにしています。
もう一つの要因は、意思決定の速さ。組織が大きいと、トップの指示は
いくつもの階層を経て現場に伝わりますが、その間の時間を空費しかね
ません。しかし、エステーの規模だと、トップの指示がすぐに伝わり一
枚岩で動けたり、現場に出向いて直接命令を出すこともあります。
大企業を上回るスピード経営は、トップがリーダーシップを発揮しやす
い、小さくてシンプルな組織から生まれています。トップ主導のワンマ
ン経営が通用するのは売上規模3000億円ぐらいまで。それ以上になる
と、ワンマン経営者は自分の成功体験に酔って舞い上がり、余計な事業
に手を出してコケることが往々にしてあるからです。
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▼アイデア一発でひっくり返す
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「脱臭炭」という、2000年に発売した冷蔵庫用の脱臭剤があります。
発売当初、同様の商品は米アメリカン・ホーム・プロダクツ(AHP、現
ファイザー)の「キムコ」、白元の「ノンスメル」、積水化学工業の「ニ
オイのみはり番」という3商品が市場を寡占していました。白元を除け
ばエステーより規模はずっと大きく、AHPに至っては十数倍の規模。
当時の冷蔵庫用脱臭剤はヤシ殻活性炭を使ったものが主流でしたが、活
性炭の量が減らないため、見た目で使用期限がわからないという欠点が
ありました。寡占市場に安住して眠っていたのでしょう。
そこで鈴木会長は、ゼリー状の製品の開発を指示しました。日が経つに
つれて徐々に縮んでいくので使用期限がわかる、という仕組みが消費者
に大好評で、一気にトップシェアに躍り出ました。アイデア一発で大き
な相手をひっくり返した事例です。
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▼小よく大を制する4つの特徴
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鈴木会長の話からは「小よく大を制する会社」が持ち合わせる、4つの
特徴が浮かび上がります。
1つ目は「俊敏性」。エステーは意思決定のプロセスがシンプルだったた
め、P&Gより早く製品を投入し、先制パンチを繰り出せました。
2つ目の特徴が「一点突破」。エステーは得意とするエアケア製品を中心
に経営資源を集中投下しています。
3つ目は「視点の転換」。ゼリー状の脱臭剤など、固定観念にとらわれな
い発想力が寡占市場をひっくり返しました。
最後は「柔軟性」。様々な技術のストックを持ち市場環境の変化に対応
する柔軟性を高めています。
その結果、消臭芳香剤こそ2位ですが、冷蔵庫用脱臭剤、米びつ用防虫
剤、衣類用防虫剤で国内シェアトップを獲得しました。
米国では柔道技を参考にした「柔道ストラテジー」と呼ばれる、小さな
企業が大手に勝つための戦略論に注目が集まっています。
出典:『日経ビジネス』2014年12月8日号
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相手が大きいと、かなうわけがないと萎縮してしまうかもしれません。
でも、小さいからこそのメリット、小さいなりの戦い方の典型的な事例
を見れば、自分たちもできる、とう自信が湧いた方もいらっしゃるので
はないでしょうか。
社員一人ひとりを主役にする
Date - 2014.11.28
今回は『日経ビジネス』で連載中の「富士重工業 吉永泰之の経営教室」
より、収益とブランド力を一気に高めた富士重工業の意識改革として、
社員と組織をどう活性化させたのか、をご紹介いたします。
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▼目指すは「宇宙のような組織」
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私が目指しているのは、土光敏夫さんが語っていた「宇宙系のような組
織」です。水星や近世、火星の動きは無秩序のようでいて、実は太陽を
中心に秩序立って回っており、上意下達のピラミッド型ではありません。
社長が細かいことまで言わなくても求心力が働く、自律的な組織です。
これからの時代、丈夫で壊れないクルマを作っていれば売れるわけでは
ありません。デザインでも機能でも、提案力が勝敗を決めるのです。
自由闊達な風土の上で現場が創造性を発揮しなければ、会社は伸びませ
ん。何を軸とすべきかを繰り返し言い続けてきたため、しっかりとした
考えを持ち、意見を言えば周りが支えてくれる社風がもともと当社には
ありました。そうなれば物事を素直に見ることができます。
何を言われても、どんなしがらみがあっても、トップが軸をぶらさず、
本音で話し、実行する。サラリーマン社会では「あの人は本音をしゃべ
ったら損をした」という話はすぐ広がります。ですから、会社のためを
思って言うことなら、何をしゃべっても不利な扱いを受けないという事
実を積み重ねるしかないのです。
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▼役員会では参加者の理解を深める
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役員会議では、私はなるべく発言せず、参加者の理解が深まっているか
どうかに気を配ります。技術の専門的な話を営業系の人が理解できてい
るか、財務の数字が技術系の人も腑に落ちているか、そこを見、「それ
はこういう意味だよね」などと、参加者の理解を深める発言をします。
これで役員クラスの見解と理解を深め、会社が向かうべき方向性を共有
してもらうことができれば、上にお伺いを立てなくても自分で判断でき
るようになります。同じことを部長が課長に、とブレークダウンしてい
けば、現場の決断力が上がるはずです。
役員でも部長でも課長でも、自分の責任範囲については自分で決めます。
厳しい状況での決断は、現場の血と汗と涙を知っている人が決めるから
こそみんながついてきてくれます。
そのためには、本当に必要な仕事に集中すべきです。
「自分の安心のために資料を作らせたり、意味のない会議をするのはや
めてしまえ」と言っています。
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▼任せるものは任せる
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組織の各層それぞれが自分で決めるというのは、社長は他の人がやるこ
とに口出しせず、社長しかできないことをやる、ということです。
私は開発中のクルマは何度も何度も見ていますし、その場では営業の責
任者なども意見をどんどん出しますが、私自身は製品や生産について細
かいことは言いません。サラリーマン社会における社長の権力は強いた
め、売れそうもないよう製品でも、それが社長の提案なら「売れるかも
しれない」と周囲が担ぎ上げてしまわないとも限らないからです。
ただ、最高責任者として、「市場から見る」ことだけはどんな場面でも
問いかけます。当社は技術志向の会社ですので、自由闊達で車好きであ
ることはいいのですが、市場から離れてはいけないのです。
そして、事業性についても常に考えています。いざクルマ談義が始まる
と、採算性や投資回収が議論から漏れてしまいがちですが、そこで釘を
刺すのが私の役割です。
そして任せるものは任せると、あとは責任です。責任は上司が負わなく
てはいけません。
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▼潜在能力を引き出す「百花繚乱」
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私はよく「百花繚乱」という言葉を使います。
1本1本の花は形も色も違いますが、集まるとひとつの色になり、同じ
花の束とは違う独特の美しさが生まれます。そのような会社にしたい。
これは冒頭の「宇宙系の組織」とも似ています。それぞれの社員の潜在
的な能力を顕在化し、存分に力を発揮してほしいのです。
社員全員がこの会社をいい会社にしたいと思い始めると、会社というの
は驚くほど伸びます。もちろん社内にはまだまだ課題はありますが、こ
の数年でその手応えを感じています。
出典:『日経ビジネス』2014年11月24日号
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収益力、ブランド力が一気に高まった内側では、自律的な組織になるた
めの意識改革があったのです。社員全員が主役、そんな組織を作るには、
やはりトップの強い信念が必要なのですね。