「二回り歳が違えば宇宙人」今どき社員の育成法

Date - 2018.02.05

今回は1月22日の「日経ビジネスONLINE」からのご紹介です。

 

「人が入ってこない、たとえ入っても長続きしない。

若手社員が1人、また1人と、抜けていくたびに心が沈んだ」。

 

人材育成に優れた中小企業を表彰する

「日経トップリーダー・人づくり大賞」で、

最優秀賞を受賞した中屋敷左官工業(札幌市)の

中屋敷左官工業の中屋敷剛社長はかつてを振り返り、こう話します。

 

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厳しすぎる未来予想図

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入っては辞める、の繰り返し。

どうしてこうなんだと悩んでいた2011年頃、

ふと思い立って、全従業員34人の年齢一覧表を作りました。

各人の現在と5年後、10年後の年齢を入れ、完成させたとき、驚きました。

10年後の平均年齢が60歳を超えていたからです。

 

「このままではうちの会社に未来はない。何とかしなければ」

 

覚悟を決めて、採用と育成の大改革を決意しました。

 

まず、事務の女性社員に

「うちの若いメンバーって、どういうふうに採用しているの?」

と聞きました。

当時、中屋敷社長は採用に関わっておらず、

実情を把握していなかったからです。

 

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求人票が魅力的でない

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そのとき見せられたのが求人票。

仕事内容の欄に

「壁、床などにモルタル及び補修材を塗る作業」

と書いてありました。

これでは、素人にはどんな仕事か全く想像がつきませんか。

「こんな求人票で、優秀な人材が応募してくるわけがない」。

 

そこで中屋敷社長は、企業理念や人材教育方法などを、

写真入りで丁寧に説明した会社案内を作成。

北海道内の工業高校に送ったところ、10人から応募がありました。

 

入社試験では、「塗り壁トレーニング」をしてもらいました。

要は「職業体験」。

先輩社員が作業している様子を撮影した動画を見せ、

「これをまねして」と指示しました。

 

実践に近い作業をしてもらうことで、応募者に

「これなら自分にもできそうだ」と思ってもらうことが狙い。

採用側にとっては、

左官の仕事のセンスがあるかどうかを見極めることもできます。

 

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足元の1年だけを見ない

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2013年、こうして選りすぐった人材を、

背水の陣の思いで6人採用しました。

こんな大人数を採用したのは創業以来初めて。

もし失敗したら、会社が揺らぐかもしれない。

「足元だけを見ていたらとてもできることではない。

ただ、5年後、10年後を考えたら、絶対にやるしかなかった」

 

従来、新人はいきなり現場に出し、教育は先輩社員任せ。

最初は、現場に入っても何もできないから、雑用が中心でした。

これでは仕事は面白くないし、成長も感じられないから、

ほとんどのメンバーが数年のうちに辞めていきました。

 

 

これまでと同じやり方では結果は変わらないと考え、

「即戦力プログラム」を作成し、入社後1カ月は現場に出さずに、

みっちり教育研修を受けさせることにしました。

 

即戦力プログラムとは何か。

職長(現場を預かっているリーダー)に、

「もし若手を預かるなら、何ができてほしいか」

「何を知っていてほしいか」

をヒアリング。

その内容を、1カ月間のプログラムに落とし込んだものです。

 

必要とされる最低限のことを知っている、

そして多少はできる状態で現場に送り出す。

これなら若手を預かる側も助かるし、新人も仕事が面白い。

 

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主役は、若手社員

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「二回り歳が違えば宇宙人。価値観が違って当たり前。

そう思えば、腹が立たない。

若手を辞めさせないためには、彼らの価値観に合わせた教育をしつつ、

学生から社会人へソフトランディングさせることが大切だ」

 

即戦力プログラムの柱は、「塗り壁トレーニング」です。

先輩職人が壁を塗る動画を見て、動きをまね、

縦2m×横1mほどの壁をひたすら塗り続けます。

1カ月の訓練期間中に、1時間以内で20回塗れるようになるのが目標です。

 

 

どうでしたか?

 

慢性的な人手不足が続く建設業界。

職人の高齢化は進み、新人は辞めていく中、

若手社員の獲得・定着に成功しているのが、中屋敷左官工業です。

 

秘訣は、若手世代の価値観に合った育成法にあります。

 

若手の育成のご参考にしていただければ幸いです。

 

 

出典:日経ビジネスONLINE