アフターサービスで一人勝ち  一歩先行き収益の向上につなげる

Date - 2014.09.05

今回からは、『日経トップリーダー』より、攻めのアフターサービスに

ついての特集「アフターサービスで一人勝ち」を数回に分けてお伝えい

たします。

 

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▼「売ってから」が始まり

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自転車や自動車、家電など商品の買い替えサイクルが伸びる中で、「売

る」よりも「売ってから」の重要性が高まっています。放っておけば顧

客が減少してしまう今こそ、“攻め”のアフターサービスが求められます。

中小企業だからこそできる小回りの利いたサービスとはどんなものな

のでしょうか。

 

アフターサービスの重要性は認識しつつも、人手や資金の不足で苦慮し

ている中小企業が多いのが現状。しかし、大企業に比べて顧客の数や範

囲が絞られている中小企業の方が、本来アフターサービスを手がけやす

いはずです。

 

 

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▼失われた「アフター機能」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・そもそも一昔前まで、中小企業は今よりもアフターサービスの機能を備

えていました。御用聞きに顧客の家を回る地域の電器店なども珍しくあ

りませんでした。ところが、家電量販店の台頭により、家族経営の小規

模店では従業員を雇って得意先を回らせる余裕はなくなりました。こう

して、地域密着型のアフターサービスは失われていったのです。

 

しかし、高齢者夫婦や独居高齢者の世帯が増えたことで、今あらためて

かつての電器店を評価する動きが出てきています。また、実際に実物を

確認せず、インターネットで購入する消費者が増えたことにより、購入

後のフォローのニーズも拡大しています。

 

その地域に本当に必要な商品やサービスを提供する会社は必ず生き残

ります。今、地域でダントツの収益力を誇っている中小企業のほとんど

は、アフターサービスを重視してきた会社です。高知県の自動車販売店、

ネッツトヨタ南国や、東京・町田市の「でんかのヤマグチ」などはその

代表例。いずれもアフターサービスを徹底したことにより、安売りから

一線を画すことに成功しています。

 

 

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▼トラブルにも向き合う

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アフターサービスの典型例は、販売した商品が壊れたりうまく使えなく

なったりした場合に、それを修理・修繕する機能です。消費者向けの

BtoCビジネスだけでなく、企業が対象のBtoBでもメンテナンスを含

めこうした機能は欠かせません。しかし、多くの業種で市場が縮小して

いる今、いわば“守り”のアフターサービスにとどまっていては、売上や

利益の増加は期待しづらいでしょう。

 

日本能率協会コンサルティングの桜井祥裕氏によれば、アフターサービ

スには、「モノ領域」「ソリューション領域」「商品企画・開発領域」の3

段階があるといいます。「モノ領域」は修理・修繕機能で、「ソリューシ

ョン領域」はそこから派生したコンサルティングなどの機能を指します。

これらももちろん会社に貢献しますが、それ以上に大きな貢献をもたら

すのは「商品の企画・開発領域」です。

 

具体的には、ユーザーの組織化をはじめ、充実したアフターサービスで

顧客満足度の向上や囲い込みを図ります。さらに一歩進み、情報収集で

顧客の潜在ニーズをいち早く把握し、新しい商品やサービスを開発する

ことにより収益の構造につなげていくことが望ましい、と桜井氏。

 

次週以降、“攻め”のアフターサービスに取り組んで成功した事例をご紹

介いたします。

 

 

出典:日経トップリーダー 2014年9月号

 

 

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ご自身を振り返れば、アフターサービスの不足によって困ったことや、

アフターサービスの良さによる満足を感じたことは多々あるのではな

いでしょうか。

次週以降、各社の具体的な取り組みをご紹介いたします。ぜひ参考にし

ていただければ、と思います。



社長の危うい発言 こんな言葉が出たら要注意!

Date - 2014.08.29

今回は、『日経トップリーダー』より、倒産や経営危機を招いた社長た

ちがよく口にしていた言葉の中から、日経トップリーダー編集者が選ん

だ8つの言葉をお伝えします。

 

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▼業界全体が良くないからうちも業績が伸び悩んでいる

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景気のせい、業界のせい、銀行のせい。確かに努力しても結果が伴わな

いことは多々ありますが、言い訳を口にしているうちは業績は回復しま

せん。責任を転嫁せず、自分の非を認めることで初めて打つ手が見える

のです。

 

「社長の教祖」と言われたコンサルタント、一倉定(いちくらさだむ)

氏は、「人の上に立つものは、『すべて自分の責任である』という態度で

いなければいけない」と言います。業績が伸びるも落ちるも、社長の心

持ち次第なのです。

 

 

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▼ライバルより業績は劣るが、わずかな差。気にしなくていい。

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同業他社の落ち込み以上に売上が減っている時に「業界全体が悪いのだ

から、その中で同業他社より少し落ち込んでいることなど、取るに足ら

ない問題だ」と言っているようなら、おそらく業績はさらなる悪化を続

けます。

 

実はその差が一番の問題で、他社より劣る現実を直視できていないので

す。落ち込みが激しいのは往々にしてやるべきことができていないから。

そこに気づき、改めない限り、業績悪化に歯止めはかかりません。

 

 

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▼幹部に経理を任せているから、私は数字を見なくて大丈夫

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経理がわからない社長は計器を見ずに飛行機を操縦するようなもので

す。どうしても苦手なら信頼できる右腕に任せる手はありますが、任せ

きりは危険です。それが原因で会社を潰してしまったのが、バイオメー

カーの林原です。

 

「弟は、私が頼めば研究費をすぐに出してくれた。以前に比べて楽では

ないかもしれないが、資金は回っており、借り入れ分の資産の裏付けも

ある。私はそう信じて疑わなかった。」(林原元社長著『林原家』(日経

BP社))

 

経理を幹部に任せても、その幹部と密にコミュニケーションを取り、収

支状況を頭に入れていなければ危険極まりないのです。

 

 

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▼この開発がうまくいけば、業績はかなり持ち直す

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社員一丸となって起死回生の一打で会社がよみがえる・・・メディアで

もよく取り上げられますが、そうした成功例の影で、最後の一撃に失敗

して倒産していく企業が多いのも事実です。

 

事業計画は実現可能な数字に基づいて作るのが原則で、希望的観測に頼

るようになったら危険です。

 

 

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▼業績を良くしてから、息子にバトンタッチする

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会社を良い状態にしてから譲ったほうが息子も経営しやすいという考

え方は間違いではありません。しかし、事業継承のタイミングを先延ば

しにした結果倒産という例はよく耳にします。

 

過去の成功体験に凝り固まった社長が経営するよりも、早めに息子にバ

トンタッチしたほうが、事業環境の変化に対応できる可能性もあります。

しかも、「社長でもないのにでしゃばって大きな改革をするのは親不幸

だ」と遠慮する息子は結構多いのです。

 

 

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▼社員は、経営のことがよくわかっていないから

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わかっていないから「社員に財務内容をオープンにしなくてもいい」と

いう言葉をよく耳にします。しかしこれは順序が逆。経営が分からない

のは、財務内容を公開せず、考える材料がないからです。

 

社員に経営者意識を持たせ、自律的に働いてもらえば業績は必ず伸びま

す。社員に経営を教えず、業績不振を嘆くのはおかしいのです。

 

 

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▼古参幹部がうるさいので、近づかないようにしている

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二代目三代目社長が、先代のときからの古参幹部と折り合いが悪いとい

うことがあります。でも、それでは間違いなく組織力は低下します。古

参幹部にどのように働いて欲しいのか、きちんと話す機会を持つべきで

す。古参幹部と、新しい経営を模索する二代目社長が、コミュニケーシ

ョンを取らずに共存するのは困難だ、と理解しておくべきでしょう。

 

 

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▼どうして俺ばかり、こんなに苦労するのだ

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一生懸命手を打っているのに、なかなか業績が上がらない。そんなとき

に経営者が被害者意識を持ち始めるとかなり危険です。「自分には非が

ない、経営能力もあるのに、それを邪魔されている。」こうした経営者

の精神状態は必ず社員にも悪影響を及ぼし、組織力の大きな低下を招く

からです。

 

 

出典:日経トップリーダー 2014年6月号

 

 

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これらは実際に倒産や経営危機を招いた経営者たちがよく口にしてい

た言葉だそうです。皆さんはこのような言葉を思わず発していません

か?経営者の発言は、経営者本人が思っているよりもはるかに社員は聞

いているもの。組織力を向上させるためにも、発言には気をつけたいも

のですね。



ゆとり世代を動かす4つのフレーズ

Date - 2014.08.22

今回は、『日経トップリーダー』より、「ゆとり世代を動かす4つのフレ

ーズ」と題し、ゆとり世代の課題を修正する秘策をご紹介いたします。

 

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▼「指示待ち」「貪欲さがない」「すぐ辞める」

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この春入社してきた新入社員の多くは、1987年度以降に生まれ、いわゆ

るゆとり教育を受けてきた世代です。一見「社会常識や考える力が足り

ない世代」と思われていますが、実際そのイメージに違和感を持つ経営

者もいるようです。

 

上の世代がゆとり世代に違和感を持つのは、競争のない世界で育ってき

た結果、他の世代とはあきらかに違う価値観を持っていることが原因で

す。その価値観は大きく分けて3つ。「お膳立ては周囲がやるもの」

「大事なのは結果ではなくプロセス」「手堅いのが一番」

その価値観さえ修正できれば、本来素直で能力もあるだけに、想像以上

に貴重な戦力となる可能性は高いのです。

 

上記の価値観ゆえに、「指示待ち」「貪欲さがない」「すぐ辞める」と

いうような課題が生じます。その課題を修正するには、ただ頭ごなしに

叱るのではなく、なぜそうするのかを考え、時間をかけて対話すること

が重要です。

 

 

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▼面倒がらず丁寧に説明を

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「テレアポ300件やって」

「わかりました」

 —数時間後—

「あれ?もう終わったの?」

「はい。300件電話しました!」

「アポイントは取れたの?」

「いえ、特には。でも言われたことはやりました。」

「・・・」

 

これは実際にあった話で、ゆとり世代を象徴するような出来事です。

こうなる理由は2つあります。結果よりもプロセスを重視するため、

電話をかけたことだけで満足してしまうこと。そしてもう一つは

「テレアポの目的は電話をかけること」だと思っているからです。

 

この場合、最終目標は契約を取ること、電話は商談のアポイントを取

るための手段であること、300件の電話をすることで◯件のアポイント

を取り付けよう、等の説明をしないといけないのです。そして、それを

一方的に話すだけでは不十分だ、と、人材育成コンサルタントの御供田

(ごぐでん)省吾氏は指摘します。

 

ゆとり世代の多くは、理不尽な経験が乏しいため、腑に落ちないことは

やりません。また、分からないと言うのは恥ずかしいため、理解してい

なくても元気に返事するという特徴があります。そのため、説明したあ

とに次の3点を確認することが大切です。

 

・  言っている意味がわかるか?

・  納得しているか?

・  具体的に何をすればいいかイメージできたか?

 

さらに、この質問に対する「分かりました」という返事を鵜呑みにしな

いこと、とも御供田氏は言います。もし理解していなさそうだと思われ

るときは、さらにもうひとつ、

・  本当に分かった?どういうことか簡単に説明してみて。

と聞いてみるのがいい、とのことです。その上で、わかっていなかった

らもう一度話をすることが必要です。

 

何度かこういうやりとりを繰り返せば、「分からなければ上司に聞いて

構わない」「基本的なことを質問しても、この上司は怒らない」という

ことを学習し、次第に自分から質問をしてくるようになる、とのこと。

そして、あとはこまめに声をかけ、うまくできたことは褒めることで、

自分が貢献している実感をもち、仕事に身が入ってくるのです。

 

また、余裕があれば早めに失敗させることも効果的です。叱られた経験

が少なく、絶対評価の教育を受けた結果、自己評価が極めて高く、自分

ができると思っている人が多いゆとり世代。『「ゆとり世代」が職場に

来たら読む本』の著者、柘植智幸氏は、「現実に気づいてもらうには、

十分なフォロー体制を整えた上で、失敗させるのが一番だ」と強調しま

す。

 

このように、育成に手間はかかりますが、うまく育てれば必ず戦力にな

るという意識を、教育担当者と現場の管理職が共有することが何よりも

大切でしょう。

 

 

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▼テクニックより根気

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これほど手間がかかるなら新人を受け入れたくない、という管理職も多

くいます。そんな状況を防ぐには、若手社員の育成も管理職の評価基準

のひとつに明確に位置づけることがポイント。その際、定性的な目標で

はなく、「半年間で制約を2件取らせる」等の定量的で具体的な目標を

取り入れた方が管理職も本気で取り組むでしょう。

 

しかし、定量目標ばかりだとテクニックに偏る可能性もあるため、

「成果を出させることは重要だが、それ以前にビジネスマンとして立派

に育ててほしい」と釘を刺すことも大切。若手社員を育てるのはテクニ

ックではなく、本当に大切なのは心がけと根気なのです。

 

今後少子高齢化により日本全体が労働力不足に陥れば、企業はゆとり世

代以上に、文化的背景の異なる人材を雇用せざるを得なくなります。ゆ

とり世代の教育は、そうした時代への貴重な練習とも言えるでしょう。

 

 

出典:日経トップリーダー 2014年6月号

 

 

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世代間ギャップはどの時代にもつきもの。ゆとり世代を批判していても

始まりません。まずは価値観を知り、こちらから歩み寄ることが必要で

す。経営者や幹部の方々からその意識で関わっていきましょう。



人手不足「今いる社員」で乗り切る 2/2

Date - 2014.08.15

今回は先週に引き続き、『日経トップリーダー』より、「人手不足“いま

いる社員”で乗り切る」の中から、各社の取り組みをご紹介いたします。

 

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▼  短時間正社員制度は難しくない

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今いる社員をつなぎとめる手段として「短時間正社員制度」が注目を集

めています。短時間正社員制度とは、子育てや介護など、ライフステー

ジの変化に合わせて就業時間を決めて働ける仕組です。パートのように

期間ごとに契約を更新する必要がなく、無理の無い形で安心して働き続

けることができます。

 

宮崎市で建築関連の設備設計などを手掛けるティーディエスでは、2009

年より導入し、現在は社員6人のうち、子育て中の女性社員1人が短時

間正社員として働いています。当初は6時間勤務でしたが、子どもの成

長にしたがって1時間延長し、今は7時間勤務となりました。

 

導入に際し、短時間正社員向けの就業規則を別途作成しました。給与や

賞与は他の社員と同じ賃金テーブルに基づいて計算し、働いた時間数に

応じて支払います。さらに退職金の仕組も整えているのだそうです。

 

しかしながら、この仕組を定着させるには、規則だけでなく、社内のコ

ミュニケーションが重要となります。短時間正社員が残した仕事が他の

社員に回ることにより不満が出た大手企業のケースもあります。

田村社長はこの点について「小さい会社なので、お互いに声を掛け合い、

思いやりを持って取り組んでいる。ミーティングを頻繁に行い、仕事量

を把握することも心がけている」と話しています。

 

 

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▼  全社員の働きを分単位で評価

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人手不足を乗り切るため、大手企業を中心に給与引き上げが進む中、中

小企業では、限られた人件費をどんな形で分配していくのかがこれまで

以上に重要となっていきます。納得度の高い形で分配できるかによって、

 

社員のモチベーション維持や離職率低下につなげているケースを紹介

します。

 

兵庫県姫路市のエス・アイ。ホームページの制作等を手がけているこの

会社では、社員の給与制度に「完全時給制」を導入しています。

こなした仕事の量や質を点数化し、ベースとなる時間給を算出。「他の

社員に対するアドバイス」「繁忙期に勤務する協調性」なども点数化し

ています。獲得した点数を半年ごとに集計し、賃金を決定するのです。

その結果、時給には3倍近い差が生じているとのこと。

 

また、働き方を正確に評価するために、それぞれの業務に充てた時間は

1分単位で正確に記録。私用の電話をかける時間は退勤扱いにするなど、

 

徹底した時間管理により、だらだら働く社員はいません。

 

一方でワークライフバランスを重視しているため、残業は禁止。社内に

は、働く時間を意識する通達が目立ちます。

「社員に納得してもらいながら、時間をかけて今の仕組を作ってきた」

と語る今本社長。エス・アイには定年もなく、20代から70代までが働

いているのだそうです。

 

 

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▼  今こそ、コネ採用

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大企業が大幅に採用を増やしている状況で、知名度の低い中小企業が真

正面から人材を確保するのは困難です。実際、採用広告に反応が無い、

と嘆く経営者も少なくありません。こうした局面では、採用においても

中小企業ならではの強みを生かしていくべきでしょう。

 

例えば中小企業は、経営者だけでなく、社員の多くも地域と強いつなが

りがあります。それだけに、「あの人が仕事を探している」「うちの会社

にはあの人がいいのでは?」というような生きた人材情報が入りやすい

環境です。今こそ、コネ採用を重視する必要があるのです。

 

東京都府中市の金属製品メーカー、エーワン精密。梅原勝彦相談役はコ

ネ採用によって多くの社員を集め、事業を伸ばしてきました。特に知名

度の低かった創業期、応募者はほとんどおらず、新卒採用を試みるも学

校から相手にもしてもらえない。そんな中で社員の紹介や地元のツテに

活路を見出したのは必然だったのかもしれません。

 

採用に際しては、2つの条件を決め、それらを守ってきました。ひとつ

は「未経験者に限る」こと。経験者は前職の知識が邪魔をし、現場が混

乱するためです。そしてもうひとつは「前職の悪口を言わない」こと。

前職の不満を漏らす人は、エーワン精密に入社後も会社の悪口を言いか

ねず、それまで築いたチームワークに悪影響を及ぼします。

 

地域の人々とのつながりを生かすことと同時に、自ら定めた2つの条件

を守ったことが成長の原動力となったのです。

 

 

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▼  「業界の常識」にとらわれない

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慢性的な人手不足が続く介護業。その中にあって、人材を順調に確保し

ながら成長しているのが、有料老人ホームの運営などを手掛けるメッセ

ージです。施設の新規開設が進むものの、「特に深刻な人手不足は感じ

ていない」と言う橋本俊明会長は、その理由を、「業界の常識」にとら

われなかったからと話します。

 

評価基準が曖昧で将来像が描きづらいケースが多かった介護業界。メッ

セージでは、一般の介護職員は10段階、管理職は11段階に分けた年棒

制を導入し、それぞれの年収を明示すると同時に、キャリアアップのた

めの評価基準を明確にしました。特徴として、役職と報酬が連動してい

ないため、管理職にならずに現場のスペシャリストとして収入アップを

狙うことも可能です。選択肢の広さが定着率を高めました。

 

また、人によって労働量にばらつきがないように、一人ひとりの1日の

業務内容をシフト表で「見える化」しました。公平性を保つことで、仕

事を抱えて離職するケースを防ぐことが狙いでした。

 

重労働だから人手不足は解消できない・・・。介護事業者自身のこうし

た思い込みで採用難に陥っているケースも多くあります。しかし、先入

観にとらわれずに手を打てば道は開けるのだ。

 

 

出典:日経トップリーダー 2014年8月号

 

 

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社員の定着率を上げる様々な取り組みをご紹介いたしました。いずれも、

中小企業でも、中小企業だからこそできる事例ばかりです。人手不足を

嘆く前に、少しでも参考にしていただければ、と思います。



人手不足「今いる社員」で乗り切る 1/2

Date - 2014.08.08

今回は、『日経トップリーダー』より、「人手不足“いまいる社員”で乗り切る」

を2回に分けてご紹介いたします。

 

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▼  ここまできた!人手不足

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東京商工リサーチによれば、建設・運輸・介護などの業種で、求人難型の人手

不足倒産が目立っている、とのこと。倒産にまで至らなくても、人手不足は

企業経営に多大な影響を及ぼしています。しかも、人手不足が改善に向かう兆

しは見られません。

 

有効求人倍率は右肩上がり、今年5月には1.09倍に達し、過去10年間で最も

高くなりました。中長期的にみて、人手不足は今後ますます深刻化する可能性

が高いでしょう。

 

少子高齢化による生産年齢人口の減少も鑑みれば、中小企業では、新規採用

よりも、まずは在籍している社員の退職防止に力点を置くことが賢明です。

 

具体的な対策としては、単なる処遇改善ではなく、従業員同士の横のつなが

りや能力開発の仕組みなど、目に見えない要素により、「この会社にいて

よかった」と思ってもらうことが定着に最も効果がある、と言われています。

 

以下、2回に分けて、人手不足対策の具体的な取り組みを紹介いたします。

 

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▼  多能工化し、全員で支える

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秋田県小坂町、社員数40名でプレス加工を手がけている(株)カミテ。

カミテでは社員の多能工化に力を注いでいます。

 

多能工化とは、社員に複数の仕事を覚えてもらうことにより、人手の余っている

仕事から足りない仕事に人員を臨機応変に回すことができるようにする仕組みで

す。

 

現場の手待ち時間を減らすことができるため、一人ひとりの作業効率を引き上げ、

「今いる社員」でより多くの仕事をこなすための仕組とも言えます。

 

カミテでは、製造部門だけでも数種の工程があり、それぞれ作業内容が大きく違

うのですが、製造担当の社員は、工場の全ての機械を使えるようになることを

目指しています。

 

それだけにとどまらず、職種を超えた多能工化も進めています。託児施設に在籍

する男性社員の1人は、普段はプレス加工に携わり、他の2人の勤務状況によって、

保育士としての勤務に切り替わるといいます。

 

多能工化成功のポイントは2つ。

ひとつは社員に多能工化制度導入の意義を理解してもらうこと。導入に消極的な

社員に対し、「多能工化によって一緒に会社を成長させよう」と丁寧に説明を

重ねました。同時に、組織変更や部署をまたぐ人事異動を行い、一歩ずつ進めた

結果が現在なのです。

 

もうひとつは新しい仕事を覚えるための仕組みづくり。社員一人ひとりの希望を

元に、毎年度教育スケジュールを組み、平行して、具体的な作業指示書を部署ご

とに整備しています。

 

カミテではこれまで、多能工化した社員に長く働いてもらうため、育児休暇制度

や介護休暇制度などを積極的に導入してきました。結果、現在では2年に2人のペ

ースで新卒社員を採用できています。また、繁忙期には必要な人員がすぐに集ま

るようにまでなったといいます。

 

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▼  稲森流「大家族主義」で突破

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「大家族主義で経営する」

これは、京セラ名誉会長の稲盛和夫氏が口にするフィロソフィのひとつ。

 

大家族主義とは、社員が互いを思いやり、苦楽を共にする家族のような信頼関を

築くことが仕事の基盤をつくる、という考え方です。中小企業が人手不足に立ち

向かう上での武器となり得ます。

 

兵庫県加古川市、昭和住宅(株)の湖中明憲社長は、稲盛氏が主催する盛和塾入

塾以来、大家族主義を目指し、全員参加の社内行事を増やしてきました。

 

ポイントは、普段社長と接する機会が少ない社員とも交流する場を作ること。

心理的な距離が縮まれば結束力が高まるからです。

 

社員昼食会はその代表例です。湖中社長が週に1度、数名の社員と食事をしなが

ら対話します。1年かけて社員と向き合うことになります。この席では改善提案

が出ることも多いのですが、それに積極的に応えることで、社員のモチベーショ

ンを高める役割も担っています。

 

大家族主義を貫くには、社員の家族も参加するイベント開催も重要です。

昭和住宅では、年に一度、家族も含めた400人が参加する大運動会を実施してい

ます。社員が仕事に集中できるのは家族の支えあってこそ。社内行事を通じて

その労に報いることが、会社への信頼感の増加、ひいては離職防止の一助となる

のです。

 

社内行事により、組織間の壁を超えた連携がスムーズにもなりました。子どもを

持つ女性の意見を取り入れ、リビングの一角に子どもの学習スペースを設置する

オプションを用意するなど、仕事の実績にも反映されています。

 

管理部門の社員が週末にモデルルームの受付を手伝ったり、と、部署の垣根を超

えて支え合う風土が根付きつつあります。

 

今でこそ大家族主義を貫いている湖中社長ですが、稲盛哲学に出会う前は、採用

難や社員の定着率の悪さに頭を悩ませていました。事業拡大が重要だ、と、営業

重視で社員に発破をかけ続けた結果です。

 

「会社を支えてくれる社員に感謝が足りなかった」という反省から、

盛和塾に入った湖中社長は、その教えを元に社内行事を増やしていきました。

その結果、かつて50%だった離職率は現在では10%程度まで減っています。

建築業界の人手不足が叫ばれる中、昭和住宅では適正な人員を確保できているの

です。

 

 

出典:日経トップリーダー 2014年8月号

 

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人手不足が叫ばれる中、根性論だけでは社員は疲弊してしまいます。

仕組みによって、「今いる社員」で乗り切っている事例を参考に、ぜひ取り入れて

いただければと思います。

 

次回は、この他4社の事例をご紹介いたします。